2011年6月8日水曜日

こんな時に宇宙に行っている場合だろうか

本日、古川飛行士を乗せたソユーズが無事打ち上げられた。それ自体はめでたい話であり、失敗するよりは良いニュースである。しかし、ちょっと気になったのは、主要メディアだけでなく、ツイッターなどの空間でも、古川飛行士の打ち上げを喜ぶ声ばかりで、「この時期に、国家予算=国民の税金を使って宇宙に行く」ことを意味を取り上げる話がどこにも出てこないのはかなり気になる。

ソユーズを有人で打ち上げると4億ルーブル(約11億5千万円)の費用がかかる。もちろん、それ以外にも訓練などにかかる費用はたくさん付随しており、古川飛行士自身が宇宙飛行士として選抜されてからずっとかかっている費用もある。過去の支出について、あれこれ議論をし始めるとキリがないが、少なくとも、これから170日間古川飛行士は国際宇宙ステーションに滞在する費用もかかる。JAXAの予算を見ても、個別の飛行士にかかる経費が明示的に出てくるわけではないため、正確な費用を算出することは難しいが、古川飛行士の滞在中にかかる費用は数十億の単位になるだろう。

一方、地上では「税と社会福祉の一体化改革」で消費税を10%にするだとか、第二次補正予算にいくらかかるとか、被災地の復興のための増税だとかが議論されている。そんな時期に、震災復興にはあまり貢献しなさそうな宇宙ステーションに行く意味はどこまであるのだろうか?そのために、数十億円という安からぬ費用を国家予算で支出することに、どれだけの正義があるのだろうか?

多分、PR活動の得意な文科省、JAXAは宇宙から古川飛行士のメッセージを被災地に向けて流し続けるだろう。有人宇宙飛行は夢であり、希望であり、未来である、という手垢のついたメッセージが繰り返されることは想像に難くない。

これまで、日本はTBSの記者として会社が費用を負担してくれた秋山さんを除く、6人(毛利、向井、若田、土井、野口、山崎飛行士)は全てJAXAの職員として訓練を受け、国家予算で宇宙に行っている。彼らはいずれも理系の大学教育を受け(文系は宇宙飛行士にはなれない)、厳しい選抜を潜り抜けたエリートである。被災地の子供たちが宇宙飛行士からのメッセージを受け、懸命に勉強し、理系の大学に入り、一流の人材になろうという希望を持つことは素晴らしいことである。子供がプロ野球やサッカー選手にあこがれて練習に励むように、宇宙飛行士にあこがれて勉強に励むことを否定するつもりはない。

しかし、そのためのコストとして、国家予算で一回のフライトと宇宙ステーションへの滞在に数十億円かけることが果たして被災地のためになるのか、と考えると、疑問が残る。もちろん、日本の宇宙開発は被災地のためにやっているわけではない。しかし、何のために有人宇宙飛行をやっているのか、はっきりしているわけではない。日本が有人宇宙飛行事業を行うことが、日本の経済を成長させるわけでも、日本の技術力を国際的に優位にさせるわけでも(すでに有人技術を持っている国は米中ロがあり、日本の技術は二番煎じ)、日本が抱える課題を解決するわけでもない。正直なところ、私も長いこと宇宙開発の勉強をしているが、日本が有人宇宙飛行をやることを意義をしっかり、説得力のある理由で説明してくれた人は誰もいない。

こうした、目的もはっきりしないような有人宇宙事業を延々と続けていること自体に意味を見出せないだけでなく、震災復興でいくらでも予算が必要な時期に宇宙に行っている場合なのだろうか?この疑問がずっと解けないまま、一日が過ぎていく・・・。

(追伸)6月10日の毎日新聞朝刊の「論点」に拙稿が掲載される予定です。このブログの記事とは内容は異なっていますが、基本的には同じトーンの記述になっています。

3 件のコメント:

  1. 全く同感です。何のためにいっているのか、どういう貢献をしているのか、費用対効果全く不明。なのに、打ち上げのたびにメディアでは意味不明な祝福ムード。乗せてもらうために、一体いくらお金を払ったのかと一緒に報道してほしい。

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  2. 私の想像では、政府としては軍事的な意味合いから宇宙産業はどうしてもやめたくない(原発も同じ)。宇宙開発には多額の費用が掛かるので、一般受けする宇宙飛行士を前面に出してここでのコラムのような批判が出にくいようにしているのではないでしょうか。なさけないマスコミは見事操作されているように見えます。

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  3. 桑山九兵衛2015年8月23日 9:13

    ホント、その通り!
    宇宙に行って何になるの?
    莫大な予算を掛けて他国の宇宙船に乗せて貰い情けなくないのか!
    宇宙飛行士なんてのは、そもそも子供騙し、宇宙でメダカを孵化させた奴がいたが何の役に立つの?

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