2012年10月12日金曜日

副大統領候補討論会

しばらくブログの更新を怠っていて申し訳ありません。この間、仕事が立て込んでいたこともありますが、一番大きいのは今年の9月からサバティカル(長期研究期間)をいただいて、アメリカのプリンストン大学に一年間留学することになったので、その準備とアメリカでの生活を立ち上げることにあたふたし、書き込む時間がありませんでした。ようやっと落ち着いて仕事ができる環境が整ったので、久しぶりにブログに投稿したいと思います。

アメリカは現在、大統領選の最終盤に差し掛かっており、ニュース専門チャンネルや朝夕のニュースも大統領選で一色になっています。ちょうど先ほど副大統領候補の討論会が終わったので、その感想を思いつくままに書いておきます。

副大統領討論会は一度しか開かれず、必ずしも大統領選の趨勢に影響があるというわけではありませんが、その前の第一回大統領候補の討論会でロムニーが優位に立ち、それが選挙戦の流れを変えていたので、この副大統領討論会で流れを断ち切れるか、というところが見どころでした。

CNNなどでは今回の副大統領討論会は引き分け、という評価でしたが、私個人としては、民主党のバイデンの優勢勝ちという印象です。

第一回の大統領候補討論会ではオバマがほとんど攻勢に出れず、受け身になってしまったことで、ロムニーが上手に立ったことを受けて、バイデンは積極的に攻めに出て、共和党のライアンをやり込めるというシーンが多くみられました。

ライアンは頭の回転の速い人ではありますが、やや知識と経験に欠けているという印象で、虚勢を張って自分たちは民主党と違う、自分たちはより良いことができる、と主張していますが、税制の議論でもかなり計算が怪しいという感じで、バイデンがツッコミを入れても具体的な回答が出せなかったので、「宿題をちゃんとやっていない」という印象が強く残りました。

また、ライアンは討論中、やたら水を飲んでいたのですが、バイデンは余裕を見せ、ライアンがしゃべっている時も、やや見下したような笑い方や、ライアンの話をさえぎるような発言が多く、ちょっと横柄(Rude)な感じがあり、どちらもビジュアル的な点ではポイントを稼げなかったように思います。

ただ、ライアンの締めのメッセージの時、カメラに向かって国民に話しかけたのですが、それがなんだか首相時代の安倍晋三を思い出させるような気味の悪さがあり、ちょっとネガティブに働いたかな、という印象です。逆にバイデンは年金を受け取る年齢の人たちに向かって話をするとき、カメラに向かって話をしたのですが、バイデン自身もその年齢なので、妙に馴染んでいたような感じがしました。

また、ライアンもバイデンもやたらに数字を出していたのですが、たぶん多くの人は数字を全部頭の中にいれてイメージを作ることは難しかったのではないか、という印象があります。もう少しわかりやすい描き方をした方が良かったのではないかと思います。

今回の討論会の司会者はABCのMartha Raddatzという人で、国際報道が中心の人だったので、リビアの米国外交官殺害やシリア、アフガンの問題を多く取扱い、経済や財政の問題については比較的時間が短かったのもバイデンに有利に働いたと思います。

というのも、現職の副大統領として、オバマと共に外交・安全保障の問題について一緒に働いているということをアピールする機会をバイデンに与え、下院議員であるライアンが知りえないインテリジェンスにアクセスできるので、情報量でバイデンが有利となり、ライアンは原則的なことを繰り返すしかなかったように思います。

大統領選の大きな争点である医療保険の問題については、両者の見解以上に事実関係の理解が全く異なっており、議論がかみ合っていないというか、「何が真実か」ということがわからないような状況でした。討論会ではお互い自分の有利になるような情報しか出さないので、話がかみ合わないのは仕方がないことでもあるのですが、それにしても、ライアンの方が柔軟性がなく、自分の言いたいことだけを言って、きちんと批判にこたえていないという印象がありました。

なので、どちらも完全に勝利したという印象ではありませんが、バイデンが有利に立ったと思います。しかし、すでに述べたようにこれは副大統領討論会なので、大統領選に決定的な影響を与えるということはありません。それでも、今回の副大統領討論会で、第一回大統領討論会の時にロムニーが提示した政策の欠陥を指摘し、本当に共和党に任せられるのか、という印象を与えたことで、バイデンに求められた仕事はこなしたのではないか、と思いました。

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