2012年10月17日水曜日

第二回大統領候補討論会

先ほど、第二回大統領候補討論会が終わった。第二回大統領討論会はタウンホール形式。市民が直接候補者に質問する形式で参加者はギャロップが投票先を決めていない(undecided)有権者から抽出されている。モデレーターは存在するが、質問は用意しておらず、調整する役割。今回のモデレーターはCNNのキャンディ・クローリーさん。

以下は、討論会を見ながら書き綴ったツイートに若干加筆した文章です。まとまりがない文章ですが、ご海容ください。

今回の大統領討論会ではロムニーがやたら介入してくる感じで、やや感じが悪かった。ロムニーは外形的な数字で議論をするが、単純化しているのでパンチが効いていた。討論会後もCNNでは経済問題についてはロムニー優位という評価だった。

逆にオバマは政策論で対応するが、難しい話をできるだけ簡単にしゃべろうとしているが、それでも複雑な話なのでキレの点でちょっと弱い。今回はかなり攻勢に出ていたが、やはり4年間の実績を擁護するという立場である以上、これまでにとった難しい選択を何とか説明しようとするあまり、一般の有権者にはわかりにくい話になっているという印象だった。

実際問題として、政策決定者と一般の国民とでは困難な問題に対するパースペクティブが異なる。政策決定者の立場に立てば、様々な要素を勘案して政策決定をしなければならず、しばしば不人気な選択もしなければならない。しかし、一般国民は「わかりやすい、筋の通った」政策を求めようとする。

これはアメリカだけに限らず、日本でも他の多くの国でも見られる現象である。そのため、野党の挑戦者は、国民受けする「わかりやすい、筋の通った」政策を提示し、それが実現可能だと思えるようなプレゼンテーションをする。2009年の民主党が政権を取った時も、現実にその政策が実現可能かどうか、というよりも、国民受けする話をして権力を取り、政権交代してから政策のことは考える、という姿勢がありありと見えた。今年、フランスの大統領選で勝利したオランドは、既に選挙公約の実現をあきらめ、雇用や財政政策の対応が後手に回っている。

このような現代民主主義の状況をポピュリズムと評価することもできるかもしれないが、少し違うような気もしている。オバマもオランドも政権につくと、その現実に直面しポピュリスト的な政策を実施することができない。むしろ、問題になるのは野党の時の姿勢である。ある意味「野党のいい加減公約」現象とも呼べるような状況が生まれている。これは民主主義にとって大きな問題なのではないか、という気がしてならない。

さて、話は脱線してしまったが、討論会に戻ろう。

ロムニーは税の問題で攻められていたが、何とか乗り切った感じだ。ロムニーの減税プランは弱点だったが、控除とのバランスで大丈夫と印象付けた。ただ、単なる机上の空論にしか聞こえず、やはり信憑性は低いというのが私の感想。

大統領討論会ではPivotという「話題を変えて相手の攻撃をかわす」戦術が重要とされているが、ロムニーは減税プランの話で「計算が合わない」という指摘に対し、「オバマの4年間の計算が合わないから借金が増えた」といったのはまさに戦術的なPivot。こうした対応で問題をはぐらかしたとしても、ロムニーの減税プランはやはり無理があるような気がする。

このロムニーの減税プランはずっと批判されているが、私にとって一つだけ良いことがあった。それはarithmeticという単語を知ったことである。民主党のキャンペーンでキーワードになる言葉だが、これは日本語にすると「算術」という単語。不勉強ながら、これまで知らず、ロムニーの減税プランを批判する際によく用いられる単語なのですっかり覚えてしまった。

さて、また話が脱線してしまったが討論会に戻ろう。

今回のちょっとした驚きは、ロムニーが「アメリカに職を取り戻すためには中国にルールを守らせ、公正な競争をすればよい。中国はバッタもんをつくっているずるい国だからアメリカの仕事が失われる」(大意)と発言したこと。ロムニーがいかにビジネスで成功しようが、オリンピックの運営に成功しようが、アメリカの製造業が衰退している原因が中国の不正にあるというのは、グローバル経済の原理が理解できていないということを白日の下にさらしたといえよう。にもかかわらず、この点について、討論会後のニュース解説などでもあまり扱っていないのはちょっと驚きだ。

総じていうと、今回の討論会は第一回とは異なり、今回の大統領討論会はオバマが積極的な攻勢に出て、ロムニーの政策の矛盾や「47%発言」などを攻撃していた。ロムニーがリビア問題でオバマが大使殺害を「テロ行為」と言わなかった(実際は翌日の9月12日、11回目の9/11に際してのスピーチで発言)という勘違いをしており分が悪い。ロムニーは「テロ行為という前提で行動しなかった」と言うべきところを「テロ行為と言わなかった」という点に限定してしまったことが失敗だった。

ただ、ロムニーのオバマの4年間への批判はそれなりに効いており、オバマは苦しい選択をしていたと言い訳をせざるを得ない状況に追い込まれていた。減税プランでも何とか乗り越えた。なので、トータルとしてはオバマが優勢であるが、引き分けという印象の討論会だった。

第二回討論会ではオバマはロムニーに対して攻めるというのをテーマにしていたようだが、その結果、ロムニーの批判とこれまでの政策の擁護に終始してしまい、これからどうするのか、二期目のビジョンを語るということができなかった。その辺にオバマらしさを感じず、オバマが魅力的には見えなかった。

CNNではオバマ46%、ロムニー39%でオバマ勝利の世論調査。実際は引き分けに近いと思うが、オバマ優位ではあった。これが選挙戦の流れを変えるまでは行かない気がするが、副大統領討論会以降、ロムニーのモメンタムは失われつつあり、この流れで選挙に行くとロムニーは厳しい。

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